
アメリカのソウルフード、BBQ
17世紀頃にアメリカで生まれたBBQ。実は、あちらでは大きな塊肉を丸ごとスモークするのが基本。切り身肉を手早く焼いて食べるグリリングとはきちんと区分けされている。本場アメリカのBBQは、何キロもある塊肉に時間をかけて火を通し、みんなでワイワイ賑やかに取り分けながら食べる、とてもダイナミックな料理なのだ。
BBQ料理と言えばプルドポーク
アメリカの人々に愛されるBBQの三大料理と言われるのが、スペアリブ、ブリスケット、プルドポークだ。テキサスなら牛肉、ノースカロライナやジョージアなどアメリカ南部では豚肉と、地域の畜産物によって主材料が変わる。特にBBQ発祥の地、ノースカロライナのプルドポークは、今やアメリカ全土で大人気の定番メニューとなっている。
プルドポークの美味しさの秘密
豚の塊肉をほろほろになるまでじっくり火を通し、やわらかく肉汁たっぷりに仕上げて細かくほぐした(Pull)料理。BBQソースを絡め、コールスローとパンにはさんで食べるのが基本だ。余分な脂がしっかり落ちているため、お腹にもたれず肉の旨みが存分に楽しめる。スモークが元来の調理法だが、現在は煮込みやオーブン調理も広まっている。


BBQの語源
もともとは、西インド諸島で肉を焼く木製の台のこと。それが大航海時代にスペインに伝わって「丸焼き(barbacoa)」に転化、英語圏で「barbecue」に。ちなみにBBQという表記は、発音からアルファベットに置き換える習慣がある英語圏で生まれた。
BBQのルーツ
もともとは西インドの原住民・タノイ族が肉や魚を保存するために直火で燻煙したのがルーツと考えられている。アメリカ初のBBQは、初期の入植者たちがバージニアやノースカロライナで行っていた豚の丸焼きだったようだ。
BBQの定義
BBQの最大の特徴は、低温で長時間かけて調理すること。日本でBBQというと切り身肉を高温直火で手早く焼くイメージが強いが、こちらにはグリリングという別の調理名がある。
アメリカの三大BBQ料理
ブリスケット、プルドポーク、スペアリブのこと。牛と豚があるのは、その地域の主要畜産物を使ったBBQがご当地メニューとして定着したからで、テキサスはブリスケット、ノースカロライナやバージニア州はプルドポーク、メンフィスではリブが主流だ。
プルドポークのルーツ
ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージアで愛される三大BBQ料理の一つ。教会やコミュニティのイベントの際に、地面に穴状の大型のかまど・ピットを作って豚を丸ごと燻蒸して食していたのが始まりのようで、現在でもBBQは祭りやパーティでは欠かせない料理となっている。
プルドポークの食べ方
もっとも一般的なのがコールスローと一緒にバンズにはさんでサンドにする食べ方だ。ノースカロライナでは甘めのヴィネガー仕立てのコールスローが一般的なようだ。ただし、今ではアメリカ全土に広まって、トルティーヤやタコス、ブリトー、ピザの具としても人気が高い。
プルドポークのソース:ノースカロライナの場合
東部では酢、塩、黒胡椒、粗挽き又は粉末にしたカイエンペッパー、レッドペッパーにブラウンシュガーを入れた甘酸っぱいソースが基本だ。西部では少量のケチャップやウースターソースを入れたタイプが多い。
プルドポークの付け合わせ
絶対に欠かせないのがコールスローだ。ヴィネガー系とマヨネーズ系があるが、どちらかというとヴィネガー系が好まれる地域が多いようだ。他にも豆のサラダやピクルスなど、甘酸っぱいサイドメニューがよく似合う。
プルドポーク・柔らかさの秘密
ホロホロと崩れるように柔らかくなるのは、低温でじっくり火を通すから。水分や脂肪を必要以上に失うことなく、コラーゲンを風味豊かなアミノ酸に変性させることで、ジューシーで旨みたっぷりのプルドポークができあがる。
プルドポーク・スモーク調理の証
スモークで調理したプルドポークにはスモークリングが生じる。肉の外周の際に生じるピンク色のグラデーションのことである。燻煙と肉の成分が反応して生じる独特の色味で、オーブンや鍋で調理しても現れない。スモークリングの有無で、スモーク調理かどうかを見極めることができる。
プルドポーク・焦げもポイント
焼き上げたプルドポークは、表面が薄皮のように焦げた層で覆われていることが多い。この焦げによる薄皮がほぐした後の肉に混ざると、絶妙な香ばしさと食感のアクセントとなってくれる。BBQコンテストでは、この薄皮の出来も審査の重要なポイントになるそうだ。
プルドポークの番人:ピットマスター
肉の調理から火の管理まで、BBQのすべてを取り仕切る人を指す、テキサス発祥の言葉。本来は炉の設計まで担える知識と技術を有する人とされるが、パーティのホスト役や鍋奉行のような意味で使われることも多い。
プルドポーク専用フォーク
プルドポークをほぐすための専門の調理器具。「ベアクロウ(熊手)」という名の通り、熊の爪のようなユニークな形状をしている。ネット通販などで簡単に入手できる。
出典: 米国食肉輸出連合会『アメリカンBBQガイドブック』
参考:
『塊肉をドン! アメリカン・スタイルBBQ』(佐藤政人著 / 誠文堂新光社)
『食の図書館 バーベキューの歴史』(ジョナサン・ドイッチュ、ミーガン・J・イライアス著 / 伊藤はるみ訳 / 原書房)
『12 BONES SMOKEHOUSE』(Bryan and Angela King , Shane Heavner , and Mackensy Lunsford / VOYAGEUR PRESS)

PHILOSOPHY OF
PULLED PORK
プルドポークの決め手は
手間と時間と作り手魂

完成まで24H。
プルドポークへのこだわり
プルドポークでもっとも重要なものは手間ひまを惜しまない我慢強さだ。それはどの調理スタイルでも変わらない。そして、BBQ生誕の地・ノースカロライナの伝統的なスモーク・スタイルでは、火を守るピットマスターの存在がカギとなる。前日に仕込んだ肉の状態を見極め、火を操り温度をコントロールしながらたっぷり時間をかけて肉の芯までじわじわと火をいきわたらせていく。スモーカーの傍らで待ち続けること、約半日。ピットマスターの時間と忍耐なくしては、ジューシーでやわらかな至福のプルドポークは実現しない。
HOW TO MAKE
PULLED PORK
プルドポークの作り方。
スモーク・スタイルの場合
-協力:Fatz's The San Franciscan-
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12H
スパイス
刷り込み約半日まずは肉の下ごしらえ。塊肉に豪快にスパイス(ドライラブ)を刷り込んで、冷蔵庫で一晩以上。ゆっくり寝かせて出番を待つ。決め手となるスパイスの配合は秘伝のオリジナルという店も多い。
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12H
スモーカーで
ほぼ半日スモーカーでとにかくじわりじわりと火を通す。焼き色に染まるまで3~4時間、しっかり火が通りきるまで6~7時間。肉のボリュームで変わるが、概ね10~12時間の行程となる。
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Complete
できたての
肉をほぐすスモーカーから取り出した肉を細かくほぐしてプルドポーク完成。あらかじめBBQソースを絡めても、盛り付けてからソースをかけてもいい。その自由さもプルドポークならでは。
WHERE
YOU CAN EAT
PULLED PORK
プルドポークが楽しめるお店
